
こんにちは。
神奈川・横浜を中心に出張撮影を承っております【Your Photography(ユア フォトグラフィ)】のカメラマン、Reiriです。
以前の記事の通り、私は12年ほどフォトスタジオで撮影をしていたのですが、それだけの期間務めていると毎年ご担当させていただくお客様もいらっしゃったりします。
夏になるとご予約が入り、予約リストにお名前を発見する度ににやにやしちゃう、そんなご家族。予約確認のお電話では通常なら撮影内容のご希望などをお伺いするのですが、ここ数年はほぼ子どもたちの夏休みのエンジョイっぷりと日焼け具合の話だけして電話が終わり、あとはすっかりおまかせという感じになっていました。
撮影はいつもハチャメチャに楽しくて、とにかくエピソードに事欠かない、そんなご家族。私は、彼らとの夏の撮影を毎年楽しみにしていました。
そんなご家族の皆様との撮影ですが、今年は春に撮ることになりました。
と、言うのも、出張撮影をしようと決めたひとつの理由に、このご家族とのことがきっかけとしてあったからです。
Your Photographyとして撮影をしながら、いつもあの春の撮影を思い出します。あの撮影が、Your Photographyの始まり、でした。

▶最初のきっかけ
以前勤めていたスタジオでの撮影の時に、そのご家族は地元のお菓子をお土産に持って来てくださって、
「こんな街があるってことを、くろちゃんに知ってもらいたくて!!」とママさんはニコニコ仰っていました。
自分の暮らす街が好き、という気持ちがキラキラしていて、それは私の中に印象的に残った煌めきでした。
考えてみれば、私がスタジオでお会いするのはほんの2時間程度で、来てくれるお客様にとっては楽しみにしてくれている『お出掛け』のひとつ。彼らの暮らしは、人生の軸となる場は別にあって、そこに溢れるなんてことのない日常の積み重ねで子どもたちは成長していて、その人生を生きている。そんな当たり前なことを、改めて考えてしまった、のです。
写真用にあつらえたおしゃれな空間で演出を加えながら特別な写真を撮ること、と、日常の中の何てことない一瞬を特別にするような写真を撮ること、のふたつの中で、私の価値観が後者にシフトしていったのはその時だったのだと思います。もちろん、どっちが良いとか悪いとかって話ではなくて、私がそっちをやってみたいと思った、ということです。
もっと、そのひとの人生の近くでの、ドキュメンタリーな写真があっても良いんじゃないのかな。見慣れた日常、そのひとの暮らす街や家の思い出、そういうものを残すことの価値もあるんじゃないのかな、そっちに飛び込んでみたいな、と思って、私は出張撮影を始めることにしました。
「……ということなので、そちらの地元に行ってお撮りしてみたいんですけど~」と、サンプル撮影の打診をしたところ、ご家族皆様ノリノリでご快諾いただいたのが、桜の頃でした。
3きょうだいの末っ子の妹ちゃんが1歳の頃からのお付き合い。可愛い妹を蝶よ花よと可愛がっていたふたりの兄も、それなりに思春期に差し掛かる年齢ながら、
「俺たちの写真がバズったらモデル料で1万円ちょーだい」とか言ってるあたりまだまだ可愛いもんだなと思いました。笑
撮影の前の日には、お天気のことなどでママさんにご連絡をしたところ何故かパパさんが代打でお返事をくださり(笑)、わざわざ地元の桜の名所の開花状況をロケハンしに行ってくださっていました(※20時過ぎ)。
▶桜の咲く街で

そして迎えた撮影当日、初めて訪れた、彼らの暮らす街。
桜の開花状況はやや遅く、しかしそれでも
「こっちなら枝下がってる!ここならどう!!?あとね、もう少し行ったところにも桜の綺麗なとこがあってね、……」と積極的に場所を提案してくださるパパさんのご活躍がありがたいったらなかったです。
「くろちゃんがここにいるなんて、なんか不思議~~」とママさんもニコニコしておられました。
桜と言ったら新進級進学的なイメージでしょう、ということで持って来てもらったランドセルは瞬く間に河川敷に放り投げられて、遊び慣れた様子で川を飛び越えていく3きょうだい。通りすがる他の子どもに「あれ、あいつじゃない?」と同級生の気配を感じたり、『あっち』や『あそこ』で場所を把握していたりする様子に、じんわり、彼らの地元にお邪魔させてもらっている実感がありました。

お車に同乗させていただいて、幾つかの場所を回らせてもらったのですが、
「学校があそこ!」「サッカーの練習に通ってたとこがあそこ」「あ、この道はね~」等々、ご家族みんながいろんな場所を、自分たちの街のことをたくさん説明してくれるのを聞きながら、私はそうそう、これこれ、と嚙み締めていました。
それまでは、スタジオという自分の領域で皆様にいらしていただけるのを、待っていました。
これからは、こうやって飛び出して行って、誰かの領域にお邪魔させてもらって、そこにいる、そこで暮らしている、その人たちにとっては見慣れたその日常の一幕を撮っていく。いつか遠い未来で、暮らす街が変わっても、新しい家族ができても、自分たちが暮らしていた日々のことを、その街の表情を、思い出せるように。
そういう写真を撮っていく為に出張撮影を始めるんだということを、改めて、決意したような、そんな撮影でした。







あれから季節はひとつ変わって、茹だるような夏も過ぎそうで、そんな時期に思い返す春の記憶。
あの日があったから、今の私があります。
彼らはきっと今年の夏もこんがり日焼けしてるんだろうなあ、と思いながら、そう言えば受験生もいたような、とか思いながら、また彼らの街に遊びに行かせてもらえる日を楽しみにしています。
Your Photography(ユア フォトグラフィ)
黒木れいり
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